スカラ座でオーケストラを聴く 〜 ガレリアに登る
Milan 1993/11/10

出張でロンドン、チューリッヒと回って、それぞれオペラを2本観たのだが、その後のミラノはオペラシーズは始まってない。スカラ座のオープニングは毎年12月7日と決まっているのだ。まだひと月先のこと。せっかくのミラノ滞在だけど、今回はオペラでなくオーケストラ・コンサート。チケット売場でスカラ座管弦楽団のチケットを購入。いまどきイタリアでもオンライン、ディスプレイに表示された空席から選ぶ。もっと前近代的なシステムかと思っていたら意外と言ってはこの国に失礼かな。

プログラムはジョルジュ・プレートルが指揮するストラヴィンスキー「火の鳥」、ブラームスの第4交響曲というもの。プレートルっていくつなんだろう。マリア・カラスと録音した「カルメン」なんてずいぶん昔に出ているから相当な歳のはずと思ったら、さほどでもなさそう。あれは若いときの仕事だったのか。

フランス人指揮者が、イタリアで、ロシア人とドイツ人の作品を演奏する。まあ、ヨーロッパのこと、それが普通のことか。日本にいて国籍云々というのは、あまり大した意味がないことかも。聴いていても違和感など全くない。もはや通貨統合まで進んだヨーロッパのこと、国籍よりも指揮者の個性だろうし、オーケストラの個性だろう。自分自身はこの劇場で聴くオーケストラを楽しめたのだけど、誘って連れて行った出張の相方はどうだったんだろう。クラシックのコンサートを聴いたこともなさそうだし、それなりに雰囲気を味わって話の種ぐらいになればいいんだけど。

連れに余計な出費をさせたくないということもあるし、自分だっていつも最安席で聴いているのだから、スカラ座でもその伝で天井桟敷だ。話に聞いていたとおり、ガレリアは入口からして別だ。これぞ階級社会とも言えるが、ここはコアなオペラファンが集うところ、そのあまりの広さにびっくりだ。スカラ座の定員は何名かというのには諸説あって、ここのエリアをどう勘定するかで違ってくるのだと思う。天井桟敷の座席の後ろに立見が入る広いスペースがあるのだ。そこでは、もちろん舞台の全景など視野に入るわけがない。注目公演ともなれば鈴なりになったオペラフリークたちが、歓声、野次、怒号を飛ばすことになるのだろう。もっとも、この日はオペラじゃなくてオーケストラの演奏会、席が埋まっているわけでもないし、ヴェルディをやるときの熱気を想像するだけだ。

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