オペラ座バスティーユ「シモン・ボッカネグラ」 ~ チョン、最後の公演
Paris 2014/10/18

パリのメトロ(地下鉄)は旅行者にとって便利、フランス語を解さない私は、タクシーで移動するのは大儀だし、ニューヨークなどと違って、ここは道の付き方が判りにくい。大きな広場から放射状に通りが延びる街並みは、地図があっても少し角度を間違うととんでもない方向に行ってしまうし…。

パリ到着後、真っ先にバスティーユに。そして週末のチケットを確保。ヨーロッパへの出張では、もうこのパターンが確立。そんなにお安くもないが、まずまずの階上の席を入手。「シモン・ボッカネグラ」と「マダム・バタフライ」、うふふ。

公演プログラムの表紙

ここの客席は伝統的なオペラハウスの馬蹄形構造ではない。舞台が観やすいのがいい。なにしろ、ピットに入るのは初代の音楽監督ですから、新しいのも道理。ところが、私の観た舞台は、この音楽監督の最後の公演となる。

初代音楽監督に予定されていたダニエル・バレンボイムが行政当局との確執で袖にしたポストに就いた韓国人、それがチョン・ミュンフン。何年かのシーズンを経て、オーケストラはじめ劇場スタッフ、さらにパリの聴衆の支持も得たようだ。カーテンコールの際には、舞台上に何と出演者が捧げ持つ横断幕が…。何と書いてあるのか、残念ながら読めなかったが、辞任を惜しむメッセージか、はたまた彼を追いやった当局への抗議か…。

ニコラス・ブリージャーの演出の舞台は簡素なものだ。公費からの支出が抑えられているという背景もあるのだろう。

公演のキャスト表

題名役はヴァルデミール・チェルノフ、最近名前の売れてきたバリトン、イタリアのバリトンのような輝かしさには欠けるものの、悪くない。ヤコポ・フィエスコ(バス)を歌ったロベルト・スカンディウッツィ、ノーブルな声だ。こちらのほうが私の好み。マリア・ボッカネグラ(アメリア・グリマルディ)役のカレン・エスペリアンは、ウィーンでデズデモナを歌ったのを聴いたが、舞台映えはするものの、歌のほうはメジャーなオペラハウスで歌い続けられるとは思えないレベルだ。プロローグが終わって、第1幕冒頭、私の大好きなソプラノのアリアなのに、こぢんまりとしてスケール感がない。フランコ・ファリーナから代わったカブリエル・アドルノ役(テノール)のキース・オルセンはまずまず。パオロ・アルビアーニ役にヴァシッリ・ゲレッロ、ピエトロ役にヨウ・クアンチュルという韓国人(?)が起用されていた。

評判のチョン・ミュンフンがどんなヴェルディを演奏するのか、私は大変興味を持って聴いたのだが、期待ほどには…という印象だった。これはもともと音楽が地味なオペラだし、奇を衒わない演奏と言えるのかも知れないが、何だか平板という感、なきにしもあらず。オーケストラの水準がそんなに高くないのも一因かも。

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