寄り道、中抜き、何でもアリ 〜 日本最低山縦走大会
2019/10/6

「さあ、みんなでいちびろう!参加者大募集」なんてキャッチコピーが目を引いた「日本最低山縦走大会」、第9回なんだとか。新聞で見て申し込んでおいたヘンなイベントにカミサンと出かける。

午前9時スタートということで早起き、近鉄、地下鉄を乗り継いで大阪港へ。海遊館前の広場にはたくさんの人が集まっている。受付を済ませてガイドブックをもらう。このイベントはいくつかの企業が協賛していて、MBSラジオも協力している。それで元阪神タイガースの藪恵壹投手が来ているのか。挨拶は「阪神タイガースが大変なことになっている」で始まる。一週間ほど前はリーグ5位だったのが、まさかのクライマックシリーズ進出で先勝なのだからOBとしては鼻息が荒い。それにしても体格がいいのと、色の黒さに驚く。現役選手なら二軍暮らしが長くてというところだが、野球解説者となった今はゴルフ焼けなんだろう。

準備体操が終わったら、いよいよ天保山に向けて出発、5分ほど歩くと公園の一角の天保山山頂、私は二度目の登頂ということになる。標高4.53m、どこが山やねんという平坦地なのだ。「日本一低い山」という看板をカメラに収める人が群がっているが、三角点は足許でっせ。敷石の中にあるから気付かない人が多いのだ。

縦走コースには三つのチェックポイントが設けられている。そもそも、初参加の我々はガイドブックをもらって初めてルートがわかる。
 「これやったら、言ってたように、途中でオンワードのファミリーセールに寄っていけるなあ。いちおう招待券と金券に変わる古着もリュックに入れてきたし」と、いきなりコースアウト。なみはや大橋に向かう一群を横目に朝潮橋方面へ、千本松渡船場の手前で合流できるだろう。こっちのルートでも距離は同じぐらいだ。

途中、市営住宅の立ち並ぶ中に池島公園があり、ここに勝利の女神なんて名前の像が立っている。確かに"VITTORIA"とイタリア語の銘板がある。何でそんな名前か訝しく思って裏側を見ると、戦災復興と地盤沈下対策で行われた土地区画整理事業を記念するものらしい。ちょっと冗談のような命名に思える。

1時間程度バーゲンを覗いてというつもりが、やはりそうはいかない。一点ずつ買っただけなのに予定時間をオーバー、まあ想定内。最近オンワードが売上げ低迷で多数の店舗を閉めるというニュースがあった。バーゲンはいつも盛況だが、考えてみればそれ以外で買うことはない。このファミリーセールにしても以前は年に2回だったと思うが、今は2か月に一度ぐらいの頻度になっている。それだけ苦境にあるということか。

さて、縦走の続き。甚兵衛渡船場で尻無川を渡り港区から大正区に入る。ここは1時間に4便という結構な頻度で船が出ている。大阪市の8箇所の渡船は全て無料、前に渡船場巡りをしたことがあるので勝手もわかっている。

途中で道に迷って余分に歩いたりもしたのでお腹も空いた。やはり街歩きにも地図だけでなくコンパスも要る。大正通に出ると飲食店が並んでいる。ありきたりのチェーン店も芸がないので、区役所の近くで目に付いたタイ料理店に入ってみる。ランチのメニューがやけに豊富。カミサンは麻婆天津丼という変わった一品で750円。私はグリーンカレーのセットにする。こちらは生春巻、水餃子、鶏のマサマンソースが付いて880円。出てきた量が半端じゃない。まさに大正区ならではのコストパフォーマンス。

「さっき通ったあたりの泉尾高校は中日の田尾の出身校やで」とか、「前にNHKの朝ドラの舞台にもなっていたけど、このあたりは沖縄出身の人が多いんや」とかカミサンに言っても、「へえー」とか、もうひとつ反応が鈍い。ドラマのタイトルとか、誰が出ていてとかの方向から行かないとダメなんだなあ。とにかく、二人とも完食とはいかず、御飯を少し残すというありさま。

お腹いっぱいになって身体も重くなった。まだまだコースの先は長い。早くもカミサンは歩きくたびれたようす、それなら奥の手、中抜きをやろう。千本松渡船場で本来のコースに戻るつもりだったけど、途中で東に折れて少し上流の落合下渡船場で木津川を渡ることにする。そこから少し歩けば南海汐見橋線の津守駅、電車で住吉大社まで行く。

天保山が最初のチェックポイント、第2のチェックポイントが住吉公園の向こう側の髙灯籠なのだ。何度も来ている住吉大社とは駅の反対側になる。これは昔の灯台、もともとこの場所ではなかったものが移設されたらしい。ここには来たことがない。ちょうど月に2回の一般公開日なので、内部の展示も見られるし上にも登れる。でも、日本最低山縦走大会のスタッフの姿はない。ここの受付時間は午後1時までになっていたのでアウト。寄り道のバーゲンで時間を食ったし、お昼御飯もあったし、それは仕方ないこと。次のチェックポイントの蘇鉄山まで、また電車で行こう。チンチン電車でもいいが、南海のほうがずっと速い。こっちなら、午後3時の制限時間に間に合うかも知れない。

堺の大浜公園に蘇鉄山はある。堺駅から海に向かって進む。ここは明治36年の第五回内国勧業博覧会の第二会場になったところ、水族館がここに造られた。もちろん今はその姿はないが、復元された龍女神像が建っている。阪神高速湾岸線の向こうに見えるのは旧堺灯台か、あそこまではちょっと遠そう。真新しい像があるのは呂宋助左衛門、戦国時代の堺の商人。

公園の中にある蘇鉄山は、天保山に比べると山らしい。こっちは一等三角点、登り口の道標まであるぞ。最後のひと登り、標高6.97mに到着。駅近くの登山口、神明神社で登山認定証がが貰えると看板に書いてある。天保山には天保山山岳会があり、山岳救助隊(どこが山頂かわからず困っている人を案内)までいるらしいが、こちらにはなさそう。

到着したのは制限時刻の午後3時を少し回ったところ、通過検印を押すスタッフは店じまいの最中だ。
「スタンプ押しますよー」と、おねえさん。
「髙灯籠にも行ったんだけど、遅かったから誰もいなくて」
「それじゃ、こっちも押しておきますね。ゴール、まだ間に合いますよ。がんばってくださいね」とか。

スタンプが三つ揃ったからには、これはゴールしなければ。お楽しみ抽選会の参加資格もできたぞ。「もおー、若い子に励まされたら、オッサンはすぐその気になるから」と、横からカミサンに突っ込まれてしまう。

フェニックス通を進むと、さかい利晶の杜がある。以前はなかった施設だ。堺の著名人ふたりを無理矢理くっつけた感じもする。与謝野晶子はカミサンの高校の先輩だが、観ている時間はない。ちょっとショートカットして、堺市役所前のゴールに悠々と到着。抽選箱から三角くじを引いたら、カミサンは大阪王将のラーメンセット、私はスパワールドの優待券1200円分。それぞれペットボトルいろはす、チョコバーも入っている。参加費が一人1000円だったから、ほぼトントンというところか。スパワールドってどこにあるのかと尋ねたら、新今宮だとか。ああそうか、潰れたフェスティバルゲートの跡に温泉施設が出来ているんだ。でも、わざわざ大阪市内までスーパー銭湯に行くかなあ。

協賛の鶴橋風月のお好み焼きの屋台や、模擬店が並んでいる。カミサンが梨を3個買ったら、もう店じまいということでバナナのおまけ。遅いゴールには御利益がある。ガイドマップを改めて眺めると、コースどおり歩いたのはほんのわずか、ほとんど勝手なルートを辿っている(青色の点線)。逸れて寄り道はするわ、しんどいとか言って電車でズルするわ、もう無茶苦茶。いや、いちびり精神の発揮ということでは、この大会の趣旨を全うしたとも言える。それに、27,000歩も歩いているのだし。来年は第10回記念大会だとか。

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