北条鉄道で加西アルプスへ
2024/1/7

大晦日、片付けをしながらテレビを横目で見ていたら、加西アルプスというのをやっていた。どうやら低山歩きの特集のよう。兵庫県には須磨アルプスもあるし、多紀アルプスもある。しかし、加西アルプスというのは初耳、きっと花崗岩の岩尾根が続く同じ系統みたいだ。ちょっと面白そうだけど、低山も低山、標高250mぐらいのもの。奈良からは遠い。いや、待てよ、ここは北条鉄道沿線、乗ったことのないローカル私鉄、山登りと鉄オタの合わせ技が成立だ。年明けの3連休に行くことを決めた。

どうやって行くか。方法はいろいろある。北条鉄道に乗るのは同じでも、ふつうに起点の粟生からか行くのは、JRで加古川線でもいいし、神戸電鉄というルートもある。逆に終点の北条町からだと、中国道の津山行きの高速バスで北条で降り、少し歩いて北条町から鉄道という逆コースも可能だ。迷った末に決めたルートは以下のとおり。ウォーキングの行程はせいぜい4時間だから、出発が遅くても問題はなかろう。

富雄 07:21 〜近鉄奈良線 区間準急 大阪難波行き〜 07:26 生駒
 生駒 07:32 〜近鉄奈良線 快速急行 大阪難波行き〜 07:53 大阪難波
 大阪難波 07:57 〜阪神なんば線 普通 尼崎行き〜 08:16 尼崎(阪神)
 尼崎(阪神) 08:18 〜阪神本線・神戸高速東西線 直通特急 山陽姫路行き〜 08:50 新開地
 新開地 08:56 〜神戸高速南北線・神戸電鉄有馬線 準急 三田行き〜 09:08 鈴蘭台
 鈴蘭台 09:09 〜神戸電鉄粟生線 普通 粟生行き〜 10:00 粟生
 粟生 10:06 〜北条鉄道 普通 北条町行き〜 10:16 法華口

乗換は6回もあるが、運賃2090円でこれが一番安い。乗換の割には接続がスムース、それでも3時間近く、新幹線なら東京まで行ける。まあ、てっちゃんでなければ遠慮したくなる行程だけど、リュックには本が2冊入っている。お馴染みの路線は読書の時間、神戸電鉄粟生線からがてっちゃんタイムとなる。困ったのは、乗り継ぎ時間が僅かで、トイレに行くのもままならないということ。どこかで隙間を設けておくべきだった。

神戸電鉄粟生線は六甲山系を抜けると三木市、小野市と市街地に出ていく。途中までは複線だがすぐに単線になる。神戸なら近くても大阪には遠い。終点粟生に到着し、近鉄の回数券で乗車していたので精算となる。インターフォンで駅員さんとやりとり、カメラに乗車券をかざして確認、思いのほかスムース、こういう客もそれなりにいるのだろう。北条鉄道のホームに移り、キョロキョロと周りを見回す。「車内で現金精算です」とホームに立っていた運転士さんが教えてくれる。さあ、出発。

一両だけのディーゼルカー、非電化路線は架線がないので運転席からの視界がいい。田園地帯を走る北条鉄道、正面に見える山が加西アルプス、善坊山があれだろう。10分ほどで法華口に着いた。この駅で列車行き違い。ここでようやくトイレにゆっくりと。外に出てきて駅員さんに「ずいぶん古い駅ですねえ。トイレは新しくてきれいですけど」と声をかけると、「大正4年なので、もう100年を超えています。トイレは地元の企業が」ということ。登録有形文化財、木造駅舎がずいぶん長持ちしているんだ。駅前の案内板によれば、戦時中、海軍の鶉野(うずらの)飛行場というのが、ここにあったらしい。確かにこのあたり、平坦地が広がっている。

田んぼの向こうに目指す善坊山が見えている。30分ほど村の中を抜け、溜池の縁を通って県道を渡ったところが登山口、ひと登りすると足元が岩に変わる。その上を踏んでいくので、それが加西アルプスの由来か。ここから遠くない高御位山は大岩塊を登る感じだったが、そこまで行かなくとも地質的には共通しているのだろう。そう言えばあちらには播磨アルプスという異名もある。

休憩を挟んで2ピッチで山頂に到着。登りでは人の姿を見なかったのに、てっぺんには何組かが。ハイキングコースとして人気があるのか、私のようにテレビを見て出かけてみようと思ったのか。案内パネルがいくつか建っていて、周囲の山名が表記されているのだが、さして特徴のない山並みなので同定が難しい。地元の人なら登っているのかも知れないけど。南の方向には瀬戸内海が見える。海から少し距離はあるけど、間に高い山はないので見通せる。このあたり、三島由紀夫の本籍地の旧志方村(現、加古川市)になる。徴兵検査を本籍地の田舎で受けたほうが、都会育ちのひ弱さが目立ち、きっと不採用となるとの父親の入れ知恵が奏功したのだが、その後のことを思うと、それが原罪意識になっていたのかも。

善坊山山頂を後に、西の笠松山に向かう。岩尾根がつづくが危ないところはない。ロープや鎖が張られているところがあっても、乾いた岩のフリクションだけで充分だ。途中に切通となった鞍部があり、釣り橋で渡る。目の前は一枚岩の鎖場だけど、こちらも問題ない。右手に岩壁状の岩場が続いているが、これはどうも古い石切場のようだ。1時間弱で、同じぐらいの高さの笠松山に到着。こちらの山頂も善坊山同様に賑わっている。風が冷たく強くなってきた。

早々に下山。道標に石彫アトリエ館とある方向に下ると古法華寺、隣に石彫アトリエ館という建物があった。登山口には七福神の石像が並んでいたり、近くに石切場があったり、ここはそういう場所だったんだ。ここまで下りると風もないので、ガスバーナーをつけて昼ご飯。途中はおにぎり一個だけだったので、お腹も空いた。

1時間に1本きりの北条鉄道のダイヤ、播磨下里駅の時刻から逆算して充分間に合うと踏んだものの、最後は急ぎ足で駅に到着。こちらも法華口駅と同様、大正4年創業時の木造駅舎、もちろん登録有形文化財。粟生での乗換は、先に発車する加古川線にする。たった一両、それなりの乗車率となる。乗換のJR神戸線は12両なので、スピードの差もさることながら、輸送密度のギャップが激しい。近年、どんどん格差が拡大しているのを実感する。JR西日本は赤字路線の切り離しを視野に入れているようだけど、SDGsなんて言っているのだから、そういう視点での交通政策もあり得ると思う。

戻りはJR、加古川経由で元町まで。元町からは阪神・近鉄で帰宅。なんでそこで乗り換えるか、南京町を素通りできないから。お土産はいつもの老祥記と最近お気に入りのYUNYUNの焼き米粉。

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